応召義務とは? 対応しないといけない基準

まずは応召義務について詳しく見ていきましょう。

応召義務とは?

医師法第19条1項で「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定められている義務になります。

端的に言えば
「診断治療を求められた際に正当な理由なく拒否することは違法」ということで、実際に過去には応召義務に違反して治療や診断を拒んだ病院が、損害賠償を命じられたケースも存在します。

事例1
千葉地裁昭和61年7月25日
呼吸促迫とチアノーゼが出現している患者の受け入れ要請を受けた救急告示病院は満床を理由に収容を断った。その後、救急車は同病院前で約1時間にわたり搬送先を探したが見つからず搬送中に患者は死亡。

裁判所はこの事例に対して「救急告知病院は救急 患者用の優先的な病床を有すること」が求められ、「満床」のみでは正当な事由とせず応招義務違反とされて損害賠償請求が認められた。
(請求額3725万円、賠償額2800万円)

事例2
神戸地裁平成4年6月30日(有責)
意識不明となった男性が搬送された病院で三次救急患者 (両側肺挫傷・右気管支断裂)と診断され、最寄りの救急告知病院への受け入れ要請したが対応できる医師が別の診察で対応中や帰宅しており在院していなかったことを理由に受け入れを拒否。

裁判所は「夜間救急担当医師(外科の専門医師を含む)が具体的にいかなる診療に従事していた かを被告病院が主張・立証しなかった」応招義務違反とされて損害賠償請求が認められた。
(請求額200万円、賠償額150万円)

上記のケースの様に満床であるだけや、または夜間の当直医師が対応中であるというだけでは場合によっては違法と判断されてしまう事があります。

これだけ見ているとすべてに対して対応義務があるように見えてしまいますが、これからは拒否できる「正当な事情」をご紹介していきます。

患者が医師の医療方針に従わず、患者自身の判断による診察内容を要求し、応じてもらえなかった場合に応召義務違反と訴えた事案

この場合にいおいて判例上、患者が応召義務違反と訴えても裁判は医師側に診察を拒む正当な理由があったとして応召義務違反は無かったとしています。

患者が暴言暴力や素行の問題で医師と正常にコミュニケーションが取れない状態

患者より診断時や通院期間中、暴言や治療方針において非協力的だったり、治療費の支払いなどトラブルが生じていたり、積み重なる問題が起きていた場合。
この場合は正常な診断、治療を行うことのできないことが想定されその上で医師が治療を拒否したことを認められています。

上記の2つの判例については、患者が医師の診断に従わず自身の希望する治療を要求、つまりは素人の判断で治療をしてほしいといわれた事に対しての拒否は当然ながら認められる点でしょう。

また患者起因で正常なコミュニケーションをとることが困難であった場合は、当然治療においてもまともに受けてくれる可能性も低く、リスクも生じます。
また暴力暴言においてもいつほかの患者が巻き込まれるかも考慮され、こういった状況がある場合は拒否をすることが認められる場合が多いようです。

いかがでしたでしょうか、応召義務とは一見するとすべてにおいて対応が義務づけられている様に見えますが、確かな基準というものが見て取れます。